国会の議論から(5月20日衆議院文部科学委員会)

今日はこれで最後です。
5月20日の衆議院文部科学委員会
郡和子委員は民主党所属。

189-衆-文部科学委員会-10号 平成27年05月20日

○郡委員 ぜひ、財政審に対しての、理解を深めるようにお働きをいただきたいというふうに思います。
 次に、いわゆる夜間中学についてお尋ねをしたいと思います。
 財務副大臣、結構ですので、どうぞ御退席いただいて結構でございます。
 文科省は、去る四月三十日に、中学校夜間学級等に関する実態調査の結果を取りまとめて、公表されました。調査は、昨年の五月一日に、全都道府県と市町村の教育委員会を対象に実施されたものでございます。
 初めて詳細な全国実態調査が行われたこの背景には、公立と自主を問わず、夜間中学の運営に取り組んでいる教師や市民らでつくる全国夜間中学研究会のおよそ三十年にわたる地道な活動と、そして、当委員会での質疑や視察などの積み重ねがあったというふうに承知をいたします。
 二〇一二年八月二十四日のこの文部科学委員会で、当時の平野文科大臣が、未設置の道県への設置を前向きに検討するというふうに答弁され、翌年の十一月十九日にこの委員会の理事が、足立区の足立区立第四中学校夜間学級を視察いたしました。そして、その翌年の四月には、超党派の夜間中学等義務教育拡充議連が設立をされました。
 この調査が実施された昨年の五月二十一日のこの委員会で、笠委員の質問に答えて下村大臣は、「少なくとも各都道府県ごとに一つぐらいは設置することによって、学びたい方々にそのチャンス、可能性が提供できるような仕組みということをやはり考えていく必要があるというふうに思います」と表明をされまして、七月の教育再生実行会議の第五次提言で、義務教育未修了者の就学機会の確保に重要な役割を果たしている夜間中学について、「その設置を促進する。」と明記されたわけです。
 そして、今回の調査結果の取りまとめ公表後の今月十二日、下村大臣は記者会見で、外国籍の人が八割ということですが、グローバル化の進展によって、母国での義務教育が未修了の外国人等の入学者が増加してきた結果、現在のような在籍状況になってきたと考えております。そもそも小中学校段階の教育は、各個人の能力を伸ばしつつ、社会において自立的に生きる基礎を養うものであり、国際人権規約においても、全ての者にその機会を与えることが求められているところであります。文科省としては、国際人権規約等を踏まえれば、学齢を超過した外国人であっても母国での義務教育が未修了である場合には、できる限り同様の機会を確保していくことが必要であると考えており、夜間中学はそのために重要な役割を果たしていくものと認識しておりますとコメントをされました。
 そこで、きょうは、外国人の教育問題という観点から、夜間中学についてお尋ねをしたいと思います。
 昨年五月に実施されました中学校夜間学級等に関する実態調査の目的は、中学校夜間学級の設置ニーズ、設置に係る検討状況、詳細な実態等について調査を行って、今後の支援また設置促進に向けた施策の検討に資するためというふうにされているわけです。
 公立の中学校夜間学級、いわゆる夜間中学校の生徒の属性や入学理由から見ますと、きょうお配りした資料の一ですけれども、千八百四十九人のうち義務教育未修了者は三百四十四人、一八・六%で、外国人等が千五百五人、八一・四%です。
 また、自主夜間中学・識字講座等の参加者の構成を見ますと、資料の二ですが、七千四百二十二名のうち、義務教育未修了者と、不登校児童生徒と、不登校等により義務教育を十分に受けられなかった義務教育修了者、いわゆる形式卒業者と呼ばれる方々ですけれども、合計で六百九十三名、九・三%で、外国人が四千四百三十四名、五九・七%でありました。
 公立の中学校夜間学級の生徒の実に八割、自主夜間中学校等の参加者の六割が外国人であります。
 では、中学校夜間学級の潜在的なニーズとも言える外国籍の子供、すなわち本国の中学校あるいは九年の教育課程を修了しておらず、かつ日本の中学校の学齢を超えている外国籍の子供がいるということになるわけなんですが、そうした子供たちが日本に現在どれぐらいいるのか、把握しているのでしょうか。また、おおよそ、その子供たちの在留資格は何なのか、承知していらっしゃるでしょうか。

○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど委員から御紹介のありましたようなデータ等を今回集めたわけでございますけれども、お尋ねの、外国籍で、本国で中学校等、日本でいう義務教育を修了しておらず、かつ日本の中学校の学齢を超えている方々という形での調査をいたしておりませんので、その人数は私ども不明でございます。
 在留資格につきましても、国勢調査在留資格等については通常把握いたしますが、御指摘の部分につきましては調査項目に含まれておりませんので、把握ができておりません。
 なお、直近の国勢調査でございます平成二十二年の国勢調査では、未就学者が、これは外国人だけではございませんけれども、約十三万人おられます。この中で外国籍の方が七千九百四十八人でございます。それで、学齢超過というのは、もちろんお年寄りの方まで全て入るわけでございますが、例えば十代、十五歳から十九歳といったようなところで見ますと、二百十九人となっております。
 この方々が本国で中学校を修了しておられるかどうかは不明でございますけれども、おおむねそういった数字の中にお尋ねの方々が入ってくるかというふうに推測するところでございます。

○郡委員 外国人に対して税金を使うのかとか、公的な支援拡充に対して消極的な見方もあるんだろうというふうに思いますが、だからこそ、であればこそ、理解を得るためにも実態の把握が必要なのではないだろうかというふうに思うわけです。
 ところで、こうした子供たちは日本の公立中学校に通うことはできるのでしょうか。

○小松政府参考人 お答えいたします。
 日本の義務教育に当たる九年の教育課程を修了していない外国人児童生徒についてのお尋ねと受けとめましたけれども、そうした外国人児童生徒、お子さんにつきましては、学齢を超過している場合でも、希望に応じて就学することが可能となっております。保護者の方に対する就学義務は課されておりませんけれども、希望に応じて、就学することは可能な形となっております。
 都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会の判断によりまして、学校の収容能力や指導体制、あるいは施設設備等の状況を勘案して、公立の義務教育諸学校に受け入れが行われているという状況でございます。

○郡委員 文科省は、受け入れを柔軟に行うことができるように各地の教育委員会に対応を求めているわけですけれども、今御答弁があったように、市町村の判断に任せられているわけです。それで、前日述べました、子供たちが昼間の公立中学校に受け入れられていない、もしくは居住する自治体によって対応がばらばらになっているということを許しているんだと思います。
 学校の収容能力や、ほかの生徒への影響、本人の意欲や能力等について、あらかじめ確認、考慮することを勧めていますけれども、想定とは違って、実際は、学齢を超えているという理由で断られているということも聞いているところであります。
 こういった子供たちが、日本における義務教育を実際には受けられずに、高校に進学をしようとしても受験資格がないという問題が生じているというふうに認識をいたします。
 中学校夜間学級等に関する実態調査でも、外国籍の生徒の夜間学級への入学理由、これを見ていただきたいんですが、ごめんなさい、きょうは資料に付しておりませんでしたけれども、日本語会話が三一%、読み書き能力二八%、中学校教育修了一七%に次いで、中学校の学力を身につけたいが一〇%、高校に入学するためが九%となっておりました。
 公立学校への外国人の受け入れを促進するには、学齢主義に立たず、受け入れ学年や受け入れ時期について、外国人の出身国の教育制度を勘案しながら、当事者並びに保護者の意向を聞いて柔軟に対応することが必要ではなかろうかと思うところです。
 文科省は、平成十九年以降、公立学校における帰国・外国人児童生徒等の受け入れ体制、支援体制づくりを推進する委託事業を実施いたしまして、平成二十三年度から、補助事業として、公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業に取り組み、昨年度からは、日本語指導を実施する特別の教育課程を開始されました。学齢を盾にした門前払いは、きめ細かな支援事業の獲得目標や、前提となる自治体の外国人生徒受け入れ体制とそごがあるんじゃないでしょうか。
 市町村の教育委員会及び公立学校の現場での対応のあり方について、学校の収容能力、その他の受け入れ体制の不備などの障壁を取り払う支援、これを充実しつつ是正していくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○丹羽副大臣 お答えさせていただきます。
 義務教育未修了で学齢を超過している外国人児童生徒でも、希望に応じて就学するということは可能でございます。
 文部科学省といたしまして、義務教育未修了の外国人児童生徒の教育の機会の確保はとても大事なこと、重要なことだと考えております。就学を希望する場合には、義務教育を受ける機会を逸することがないように、周知を行っております。
 また、先ほど委員おっしゃられたように、外国籍の子供の受け入れの体制整備も、もちろんこれは非常に重要なことでございまして、教員定数の加配措置やサポートスタッフの配置、また、公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業による自治体への補助等、支援を行わさせていただいております。
 今後とも、これらの施策の充実にしっかりと努めていきたいと考えております。

○郡委員 ぜひお願いをしたいと思います。
 外国において九年の教育課程を修了していない、学齢を超過した外国人の子供で、昼間の公立中学校の受け入れを断られた子供たちが日本の高校受験を希望する場合ですけれども、またあるいは、その準備のために学習言語としての日本語を習得しようとする場合どうすればいいのか。我が国にはどのような選択肢が用意されているんでしょうか。

○丹羽副大臣 お答えさせていただきます。
 夜間中学校等、現在約千五百人の外国籍生徒が学んでおり、このうち、主たる入学理由を高等学校に入学するためとしている方が外国籍生徒全体の約一割の百三十七名というふうになっております。日本語が話せるようになるためとしている方が約三割の四百六十二人というふうになっておりまして、卒業後の進路につきまして、平成二十五年度、外国籍の卒業者二百二十三人中九十四人の方が高校に進学しているなど、夜間中学が外国籍生徒の高校入学のための選択肢として一定の役割を果たしていることは明らかになっております。
 さらに、文部科学省としては、定住外国人の子供の就学促進事業、また、高校入学を目指した日本語学習等を支援する取り組みを民間団体に委託して行うというのも可能といたしておりまして、団体の支援を受けるという選択肢もあるというところでございます。

○郡委員 二百二十三人中九十四人が高校入学を果たしたということを御報告いただきましたけれども、日本における外国人学校を卒業するという手法もあるわけですね。
 ですが、実はこれも地域ごとにばらつきがございまして、必ずしも中等教育課程を修了したからといって日本の公立高校への受験資格が得られるわけではございません。
 また、中学校卒業程度認定試験がありますけれども、これは、日本に来て間もない外国の子供さんたちにとっては大変高い壁になっています。
 そこで、現実的な受け皿として重要になっているのが、先ほど副大臣もお話しになられましたけれども、夜間中学ではないかと私も思っているところです。
 報道発表されました中学校夜間学級等に関する実態調査の結果では、初めての調査ということで、過去に比べてこの数字がどういうふうに推移してきたのかということは比較することはできないわけですけれども、参考までに、日本語指導が必要な外国籍児童生徒数の傾向を見てみますと、二年前の調査と比べて二千百八十五人、八・一%増加して、学校数としては三百七十三校、六・五%増加しておりました。
 学齢を超過した義務教育未修了の日本に来て間もない外国人の子供たちにとって、夜間中学というのは非常に重要な位置づけになっているんじゃないかというふうに思います。
 外国人の子供たち、若者が高校に進学をして、そして、ちゃんと将来仕事について社会から排除されないようにしていくということ、これは、とても大切なこと、共生社会を確立していく上でも重要なことだというふうに私自身思っています。
 それでは、全国にそういった子供たちの受け皿となる夜間中学はどれぐらいあるかといいますと、御承知のように、偏在をしているわけですね。中学校夜間学級等に関する実態調査の結果、八都府県二十五市区において三十一校でございます。日本語の指導が必要な子供たちが散在している現実とはやはりかけ離れているように思われます。
 五月十九日、文科省の調査では、自主夜間中学・識字講座など、県別取り組み件数も明らかになっています。これも資料につけましたけれども、資料の三、夜間中学を設置していない市区町村が九九%。そして、資料の四というふうになるわけですけれども、夜間中学の設置の予定がない理由は何だというふうに思われますでしょうか。

○小松政府参考人 お答え申し上げます。
 今回行いました実態調査によりますと、これは千七百三十八の全ての市区町村を対象にしたものでございますが、二十五市区町村で夜間中学を設置しているということでございますので、御指摘のように一%ということになりますが、「国の動向を踏まえて検討したい」という回答をされたところが、市区町村にしまして四百二十、二四%ぐらいになります。それから、「現時点では検討の予定がない」と御回答された市区町村が千二百九十二市区町村、七四%という結果でございます。
 この検討の予定が現時点ではないと回答された市区町村に理由を尋ねましたところ、まず、九割ぐらいが要望・ニーズがないということでございましたが、施設・予算の調達が難しい、あるいは近隣の自治体に夜間学級が設置されている、識字教室その他の事業でニーズに応えているというような回答もあったところでございます。こうしたところが実情かと理解いたしております。

○郡委員 夜間学級を設置している市町村のおよそ七割に対して、県内のほかの市町村からの入学の可否の問い合わせというのが半年に一回以上あるようです。また、ほかの府県からも、およそ三割の市町村が問い合わせを受けているということで、財政その他の負担が生じる夜間学級の設置に自治体が慎重になるという側面もあるだろうし、また、ほかの県やほかの市町村に在住する子供や外国人の受け入れということについて、何といっても自治体住民の合意、それからまた納税者の理解というのが不可欠になってくると思います。
 外国人材の受け入れ、活用という国家戦略との関連などを含めて、夜間学級の必要性を丁寧に説明して、財政支援を初め、都道府県に一校設置に向けた国としての取り組みの姿勢を示し、都道府県の協力と市町村との連携をつくり出していくことが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○丹羽副大臣 お答えさせていただきます。
 今回行わさせていただきました実態調査の結果、夜間中学校に在籍する生徒の約八割が外国籍の方々でございまして、夜間中学校が外国人の方々に教育の機会を保障するための重要な役割を果たしていることが明らかになってまいりました。
 また、今後の夜間中学校においては、戦後の混乱の中で義務教育を修了しないまま学齢を超過した方々に加え、不登校等のためにほとんど学校に通えないまま中学校を卒業した方々や、昼間の学校に通うことができない不登校生徒に教育機会を提供していくという役割も期待されると考えております。少なくとも都道府県に一つは夜間中学校を設置する必要があるというふうにも考えております。
 このため、文部科学省におきましても、平成二十七年度の予算において、広報活動を強化するとともに、未設置の都道府県において、区域内の市町村にも参加してもらいながら、設置に向けた検討を行っていくための必要な経費を計上いたしております。
 国、都道府県、市町村が連携協力して、夜間学級の設置が促進されるような取り組みを加速させていきたいと思います。

○郡委員 他方で、自主夜間中学・識字講座の全国的な実態についても明らかになったわけです。自主夜間中学というのは、文科省によりますと、市民ボランティアなどの有志が中心となって、外国人や義務教育未修了者などに基礎教育などを施すことを目的とし、社会教育施設などで自主的に運営する組織でございます。自主夜間中学・識字講座などは、より多くの都道府県、市区町村で行われております。
 公立の夜間中学の設置数が最も多い大阪でも七十三件の自主夜間中学がございますし、東京都でも四十三件、奈良県で二十六件、神奈川で十八件。多くの市区町村の公立中学校に夜間学級が設置されていない三重県や長野県、徳島県、埼玉県、栃木県などでも、自主夜間中学が行われているということです。
 私たちの地域では夜間中学のニーズがないと多くの市区町村が答えているわけですけれども、必ずしもそうではないわけでして、日本人の形式卒業者を含め、掘り起こせばニーズはかなり大きくなるもの、そういうふうに思っています。国の方針として、公的支援策、そしてまた先駆的な取り組みを進めてきた団体などへの支援、また、今後の体制の拡充を図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○丹羽副大臣 お答えさせていただきます。
 郡先生おっしゃるとおり、やはり夜間の学級とかボランティアによるそういった取り組みにおいては、これはまさに夜間中学校の設置に対する潜在的なニーズのあらわれというふうに考えております。
 予算事業も活用しながら、都道府県教育委員会や市町村教育委員会における設置に向けた検討を積極的に支援していきたいというふうに思っておりますし、自主夜間中学校に対する支援につきましては、実態調査の結果から、市町村によっては、施設の提供や教材の提供、指導者の派遣などの支援策が講じられていることも実態として明らかになっております。
 国といたしまして、こうした市町村におけるすぐれた取り組み事例を広く提供するとともに、目的や対象に応じて、定住外国人の子供の就学促進事業や、生活者としての外国人のための日本語教育事業など、外国人に対する日本語教育の充実につながる各種事業も活用しながら、必要な支援を行っていきたいと考えております。

○郡委員 私もぜひ応援をさせていただきたいというふうに思います。
 質問を終わります。