国会の議論から(平成28年2月25日衆議院予算委員会第5分科会)。

次は平成28年2月25日衆議院予算委員会第5分科会から。
本村賢太郎議員は民主党。塩崎厚生労働大臣とのやりとり。(EPA
ついで堀内詔子議員は自民党。石井社会・援護局長とのやりとり。(EPA
最後は武村展英議員は自民党。神田医政局長、唐澤保険局長とのやりとり。(医療通訳

○本村(賢)分科員 私も相模原が地元でありまして、今回幾つかの介護施設にお邪魔している中で、例えば毎月八十万円、百万円の広告代を使って人材を募集してもなかなか日本人が集まってこない、非常に厳しい現実があるということで、あとは介護報酬二・二七%の削減も非常に響いているという声を伺っております。幾つものメニューを大臣を中心にやっていただいていることは、ここは評価をしなくちゃならないわけでありますけれども。
 そこで、労働力確保のために行っていないとは承知をしているわけでありますが、一方では、現場では、人材不足の解消に、EPAということで、インドネシア、フィリピン、ベトナムと結んでいる観点で、この三カ国の皆さんが、二国間の経済連携の強化というのが本来の趣旨だということは十分承知をしておりますが、こういった外国人労働者に対しても非常に現場の皆さんは大きな期待をされております。
 特に、親日であるインドネシアの皆さんは試験に合格する確率が比較的高いと伺っておりますが、フィリピン、ベトナムはまだまだ厳しい形でありますし、三年間現場で働いて、介護福祉士の試験を受けて、おっこちると一年間また延期できるようでありますが、帰ってしまう方も多いようでありまして、そういった帰ってしまう人材を、やはり地元の人たちはもう一度、例えばフィリピンに行って、もう一回試験を受けてくれないかと。恐らく、日本で得た経験が、後にはこのフィリピンやインドネシアベトナムで介護という形で生かされていくというふうには思っているんですが。
 平成二十六年十月から外国人介護人材の受け入れに関する検討会が行われておりまして、あす取りまとめがあるとも伺っているんですが、介護におけるEPAの拡充についてお考えをお聞かせいただきたいと思っています。

○塩崎国務大臣 先生今御指摘のように、インドネシア、フィリピン、ベトナムにつきましてはEPAで介護の人材を入れるということになっているわけでありますが、この外国人介護福祉士候補者については、既に二〇一五年の日本再興戦略、これは去年の六月三十日に閣議決定をしておりますけれども、そのさらなる活躍を促進するための具体的な方策を検討しろということになっておりまして、これが、今お話あったように、本年度中に結論を得るということになっています。
 今御指摘をいただいた外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会につきましては、今議論を重ねておるところでございますけれども、今月十九日に、先週ですか、外国人介護福祉士候補者の研修を行う受け入れ対象機関の範囲の拡大というものを固め、これは有料老人ホームなども追加をするということでありますが、そしてまた、そこで研修を修了して介護福祉士の資格を取得した、そういう人たちに関しては、就労の範囲の拡大ということで、医療機関についても御活躍をいただこうじゃないかということになりました。
 そういったことを初めさまざま今議論をしているところでございまして、今お話がありましたように、二十六日、あすでございますが、検討会を開催して取りまとめをしようというふうに思っておりますので、その検討会での御議論を踏まえて、介護福祉士候補者などのさらなる活躍を促進してまいりたいというふうに思っております。

○本村(賢)分科員 今のお話ですと、外国人の皆さんの働く環境が、少し枠が広がるのかなという方向で捉えましたので、ぜひとも、日本で経験した外国人の皆さんが、やはり本国でもまた日本での介護の経験を生かせるような形で、ともにウイン・ウインの形になるように御指導をお願いしてまいりたいと思っています。

(中略)

○堀内(詔)分科員 ありがとうございます。
 在宅医療の問題、認知症の問題、これからの高齢社会でますます重要な課題となってまいりますので、よろしくお取り組みのほどお願い申し上げます。
 続きまして、介護人材の確保について質問させていただきます。
 介護離職ゼロを目指し、今後二十五万人の介護人材が必要となってまいります。労働力の減少が進む中、介護人材の確保は深刻な問題となっております。
 国内の介護労働の充実はもちろんですが、最近、外国人の介護人材についても議論が活発となってきております。
 今後、外国人の受け入れも含めて、政府としての対応はいかがでいらっしゃいますか。質問させていただきます。

○石井政府参考人 お答え申し上げます。
 介護離職ゼロ、これは一億総活躍社会の実現のため大変重要な政策の柱でございまして、議員御指摘のように、介護施設の整備とあわせて、人材の確保、これは極めて重要でございます。
 このため、介護福祉士を目指す学生に、介護職に五年間の勤務で返済を免除する奨学金制度の拡充や、あるいは介護ロボットの活用促進、ICTを活用した生産性の向上の推進、さらには平成二十七年度介護報酬改定による処遇改善の着実な実施などの取り組みを進めるとともに、これらの施策の効果検証を行いながら、必要に応じて施策を充実改善し、着実な介護人材の確保につなげていきたいと思っております。
 委員が御指摘のとおり、まずはこうした介護人材の確保、あくまでも国内の人材確保、これをしっかり進めていく、充実強化が基本だというふうに考えているところでございます。
 他方、介護分野における外国人の人材の受け入れに関しましては、既に、経済連携協定に基づきまして、経済活動の連携強化を目的として外国人介護福祉士等の受け入れを実施しているところでございます。これは閣議決定ができておりまして、これに従いまして、そのさらなる活躍促進のための具体的な方策についてただいま現在検討を進めているところでございます。
 さらに、同じく閣議決定に沿って、専門的、技術的分野への外国人材の受け入れを目的としまして、日本の介護福祉士養成施設で学んで、かつ介護福祉士資格を取得された方の就労を認めるため、在留資格「介護」の創設などを内容とします出入国管理及び難民認定法の一部改正法案、これが国会に提出されているところでございます。
 これらはいずれも人材確保そのものを目的とするものではございませんが、ただ、介護を担っていただくこともこれは事実でございますので、まずはこのEPA介護福祉士等のさらなる活躍促進を図るとともに、あわせて、この法案の早期成立、これが重要と考えておりまして、その成立の暁には、この円滑な施行に向けて全力で取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。

○堀内(詔)分科員 ありがとうございます。
 私も、議員の一員として、法律の制定に向けて一生懸命努力してまいりたいと存じております。

(中略)

○武村分科員 (略)
 続きまして、次の質問に移らせていただきます。
 医療通訳者につきましてお尋ねをいたします。
 私の選挙区である滋賀県では、外国人集住地域におきまして、外国人が医療機関で診察を受ける場合に、医療通訳者がなくてはならない存在になっております。
 こうした医療通訳者につきまして、医療機関が募集を始めてから現場で業務に従事するまでに四、五カ月の時間を要します。また、従事した後のスキルアップのための教育の継続が必要となっておりまして、医療機関の大きな負担となっている現状です。
 そこで、例えば、公的機関による医療通訳士の認定制度をつくるとか、その後の継続的専門研修制度をつくる、そういったことも考えられますが、厚生労働省の御見解をお伺いいたします。

○神田政府参考人 先生御指摘の医療通訳についてでございますけれども、厚生労働省といたしましては、平成二十五年度の補正予算におきまして、医療通訳の育成カリキュラム、またそのテキストを作成、公表いたしまして、各種団体の研修で今使っていただいているというところであります。
 それから、平成二十六年度から、医療機関における医療通訳や外国人向け医療コーディネーターの配置について財政支援を行っているところであります。
 さらに、二十八年度におきましては、その対象に電話通訳の活用等に対する支援も盛り込むということで、現在予算案を提出させていただいているところでございます。
 御指摘の公的な仕組みについてということでございますけれども、現在、国立国際医療センターでございますとか日本医療教育財団、大阪大学等で既に医療通訳の養成が行われております。平成二十八年に、学識経験者ですとか医療関係者、実務者を交えまして、医療通訳の評価の基準のあり方について研究を行うことを現在検討しているところでございます。

○武村分科員 ありがとうございました。
 厚生労働省として、育成カリキュラムそしてまたテキストを作成する、そういったお取り組みをされているとのことでした。また、従事者の配置に対しまして財政支援をしていただいている、こうしたお答えでしたけれども、やはり、一定の水準、レベルを保つためには、私は、公的機関による資格制度というものは必要だというふうに思いますし、資格を取った後も、スキルアップ、そしてまた水準を保っていく、そうした取り組みをするためにも公的な資格制度というのは必要だというふうに思いますので、これからも御検討のほどをいただきたいと思います。
 続きまして、こうした通訳業務と医療保険制度の関係についてお伺いをいたします。
 医療通訳者が安定的に雇用され、その質を一定の水準に維持するためには、医療通訳士を正当に評価するような医療保険制度を構築する必要があるというふうに考えます。
 例えば、医療通訳者雇用を機能評価項目にする、あるいは、医療通訳士がかかわった外国人患者数を診療加算項目で評価する、さらには、医療通訳者を医師事務作業補助三として位置づけるといったことが考えられますけれども、厚生労働省として御見解をお伺いいたします。

○唐澤政府参考人 お答え申し上げます。
 先生からいろいろな御提案をいただきまして、ありがとうございます。
 今の現状でまず申し上げますと、この保険診療の範囲というものがやはり診断と治療ということになっておりますので、通訳の方の通訳料を診療報酬で払うというところまではなかなかいっていないのが実情でございます。
 ただ、御指摘のように、外国から訪れる方、これは観光客の方も含めて非常にふえてきておりますので、例えば、そういう方たちがぐあいが悪くなったときの訴え、お医者さんに説明とか訴えとかいうものをきちんと伝えられるのかということが課題になっていることはもう先生の御指摘のとおりであると考えております。
 現在の保険制度では、例えば、通訳の方をお願いして、それにコストがかかったという際には、実費徴収として病院が徴収できるという位置づけにはしてございますけれども、混合診療みたいな話とは違うので実費は徴収できるということにしておりますけれども、実際に徴収できるかどうかということはまた別の問題なんですね。
 こういうようなことが現在の状況でございますけれども、これから海外からの方もふえてくるというようなこともございますので、医療関係者だけではなくて、保険者も含めた議論というものが必要であろうと思いますので、これが必要な場合には、保険者も参加をしております中医協などでも議論をいただくようなことも含めて検討してまいりたいと考えております。

○武村分科員 ありがとうございました。
 保険者も含めて議論をしていただけるということで、今や必要不可欠となっている医療通訳者につきまして、雇用する医療機関側の経営、それからまた、今度は働かれている医療通訳者側のモチベーション、そして、今お答えいただきました保険者も含めて、幅広くやはり議論をしていただいて、現場の方々の声に改めて耳を傾けていただいて、安心できる医療システムの構築に努めていただきますようにお願いを申し上げます。